AK4493S搭載オーディオDAC完全ガイド:高音質への扉を開く最新技術

オーディオの世界で「DAC」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。Digital-to-Analog Converter(デジタル-アナログ変換器)の略で、デジタル音声信号をアナログに変換する重要な役割を担っています。そして今、オーディオ愛好家の間で注目を集めているのが、旭化成マイクロデバイス(AKM)社の次世代DACチップ「AK4493S」です。

この記事では、AK4493Sの技術的特徴から、それを搭載した最新のオーディオ機器まで、あなたのオーディオ体験を向上させるための情報を徹底解説します。

目次

AK4493Sとは?最新DACチップの特徴を解説

AK4493Sの登場背景と技術革新

AK4493Sは、AKMの人気DACチップ「AK4493」の後継として登場した最新モデルです。2020年に発生した旭化成の半導体工場火災の影響から復活を遂げ、オーディオ機器メーカーに新たな選択肢を提供しています。

このチップの最大の特徴は、超低消費電力と超低歪みを両立している点にあります。多くの製品で0.00015%以下という驚異的な低歪率(THD+N)を実現し、クリーンでピュアなサウンドを提供します。

主な技術仕様と特徴

  • サンプリングレート: 最大768kHz/32bitのPCM、DSD512対応
  • 超低歪率: 0.00015%以下のTHD+N
  • VELVET Sound技術: AKM独自の音質向上技術
  • 低消費電力: 前世代と比較して消費電力を大幅に削減
  • S/N比: 最大128dBという高いダイナミックレンジ
  • MQA対応: 多くの機種でMQA(Master Quality Authenticated)デコード対応

AK4493Sサウンドの特徴

AK4493S搭載機器のサウンド特性としては、ナチュラルで有機的な音色表現が特徴的です。冷たさのないウォームな中域と滑らかな高域再生により、デジタル特有の硬質感を抑えた自然な音楽再生を実現します。同時に、高い解像度と情報量によってディテールも豊かに表現します。

AK4493S搭載製品カテゴリー別ガイド

AK4493S搭載製品は、様々な形状・用途のオーディオ機器に幅広く採用されています。ここでは、主なカテゴリー別に製品を紹介します。

デスクトップ型USB DAC/アンプ

デスクトップで使用する据え置き型のDAC/アンプは、自宅でのリスニング環境を大幅に向上させます。

FIIO K7

FiiOのK7は、AK4493SEQをデュアル構成で採用したミドルレンジのデスクトップDAC/アンプです。THX-AAA 788+アンプ回路とフルバランス構成により、3.5mmシングルエンド出力と4.4mmバランス出力を備えています。32Ω負荷時に最大2000mW、300Ω負荷時に最大560mWという高出力により、幅広いインピーダンスのヘッドホンを駆動可能です。

特筆すべきは、DACからヘッドホンアンプまでの完全バランス回路設計。各ブロックを相互干渉が最小限になるよう設計することで、信号の忠実性とS/N感の高い音質を実現しています。また、112段階の細やかな音量調整が可能なADCボリュームコントロール機能も備えています。

SMSL DO300EX

SMSLのDO300EXは、AK4499EXとAK4191を組み合わせたフラッグシップクラスのDACで、0.00006%(-124dB)という驚異的な超低歪みを実現しています。最新の第3世代XMOS XU-316チップを採用し、PCM 32bit/768kHzとDSD512に対応。MQAとMQA-CDのフルデコードにも対応しています。

USB、Bluetooth、光、同軸、I2Sの5種類の入力と豊富な出力端子を備え、QCC5125 Bluetoothチップによる高音質ワイヤレス接続(LDAC/aptX HD対応)も可能です。ハイエンドクラスの製品で、より上質なオーディオ体験を求めるユーザーに適しています。

TOPPING E30II lite

TOPPING E30II liteは、AK4493Sを採用したコンパクトなDAC。最大121dBのダイナミックレンジと0.0004%未満のTHDを実現し、DSD512およびPCM768kHzまでのオーディオストリームをサポートしています。Windows、Mac、Linux、iOS/Androidなど幅広いオペレーティングシステムとの互換性も魅力です。

リモコンを使って-99dBから0dBまで音量を調整できるプリアンプモードを備え、アンプやアクティブスピーカーと組み合わせた使用にも適しています。光入力と同軸入力は最大192kHz/24bitに対応し、従来の機器とも接続できる汎用性の高さも特徴です。

ポータブルUSB DAC/アンプ

やタブレットと接続して使うポータブルタイプは、外出先でも高音質を楽しみたい方に最適です。

Astell&Kern AK HC4

Astell&Kern AK HC4は、AK HCポータブルUSB-DACシリーズとして初めてAK4493Sを搭載したモデルです。3.5mm3極アンバランスと4.4mm5極バランス(GND結線)のデュアル出力を備え、3.5mm出力は2Vrms、4.4mm出力は3Vrmsという高出力を実現。

特筆すべきは「DAR」(Digital Audio Remaster)テクノロジーの搭載で、音源のサンプリングレートをリアルタイムにアップサンプリングすることで、より洗練された音源再生を可能にしています。このDAR機能は側面のスライドキーで簡単にON/OFFの切り替えが可能です。

また、PS5やSwitchなどのゲーム機器との接続も想定したUAC 1.0/2.0切り替え機能も搭載しており、クロスプラットフォームでの使用が可能です。バスパワー駆動方式で充電不要なことも便利なポイントです。

ONIX Alpha XI1

ONIX Alpha XI1は、CS43198をデュアル構成で採用し、PCM 768kHz/32bit、DSD256に対応したポータブルDAC/アンプです。3.5mmシングルエンドと4.4mmバランス出力、2段階のゲイン切替、最大500mW@32Ωの出力を実現しています。

ミニマルなブラック×ゴールドのデザインで、0.87インチOLEDディスプレイとハードウェアボタンを備え、本体のみで内部設定とボリューム調整が可能です。リングRGBインジケーターが再生楽曲のサンプリングレートに応じてカラー変化するなど、視覚的な楽しさも備えています。

UAC2.0とUAC1.0(Game Mode)の切り替えに対応し、ゲームコンソールとの互換性も確保。Android向けアプリ「Eddict Player APP」から内部設定のアクセスも可能です。

EarFun UA100

EarFun UA100は、ES9038Q2M SABER DACチップを搭載し、32bit/768kHz PCMおよびDSD512デコードに対応したエントリーモデル。特許取得済みのクロックジッター抑制テクノロジーにより、高い音質性能を実現しています。

3.5mmシングルエンド端子と4.4mmバランス端子を装備し、バランスドヘッドホンアンプ回路を統合。ESS DACに特化したRicore RT6863を2つ使用することで、高い出力パワーとクリーンな音質を両立しています。

一体成形のアルミニウム筐体は10.6gという軽量設計ながら高い耐久性を備え、外出先での使用に最適です。低ドロップアウト電圧レギュレーターを採用し、ノイズを極限まで抑えたバックグラウンドを実現しています。

卓上型マルチ入力対応DAC

様々な入力ソースに対応したDAC製品は、多様なオーディオ機器との接続性を重視する方に最適です。

S.M.S.L D12

S.M.S.L D12は、AK4493Sを搭載し、0.00015%という超低高調波歪みを実現したDAC。Bluetooth 5.0に対応しており、ワイヤレス接続も可能です。PCM 32bit/768kHzとDSD512をサポートし、PS5などのゲーム機との接続も想定した設計になっています。

6.35mmヘッドホン出力を備え、MQA対応でハイレゾ音源の再生にも適しています。コンパクトなサイズながら豊富な接続性と高い音質性能を両立させた製品です。

FIIO K9 AKM

FIIO K9 AKMは、AKMのフラッグシップDAC「AK4191EQ+AK4499EX」を採用したハイエンドモデル。デジタル処理とアナログ処理をチップレベルで分離するセパレートDAC方式により、S/N比を向上させています。

THXと共同開発した「THX-AAA 788+」アンプ回路を左右チャンネルに1基ずつ搭載し、32Ω負荷時に最大2000mW、300Ω負荷時に最大780mWという高出力を実現。DACからボリュームコントロール、ヘッドホンアンプまでのフルバランス構成により、高いS/N感と重厚な音像表現を実現しています。

XMOS製「XUF208」と二系統の超高精度水晶発振器、高品質な電源供給設計により、クリーンな電源と精密なクロックを確保。ADCボリュームコントロール機能により120段階の細やかな音量調整も可能です。

QCC5124 Bluetoothチップを搭載し、LDAC、aptX HD、aptX Adaptiveなどの高品質コーデックにも対応しており、多様な接続方法を提供しています。

Acoustune AS2002

Acoustune AS2002は、AK4493Sを搭載し、PCM最大768kHz/32bit、DSD512ネイティブ再生に対応したポータブルDAC。大口径のダイナミックドライバーや複数ドライバー搭載イヤホンの性能を引き出すために開発されました。

3.5mm3極アンバランス、4.4mm5極バランス接続に対応し、アンバランス接続で最大120mW@32Ω、バランス接続で最大240mW@32Ωの出力を実現。アンバランス・バランス接続の音質差を極限まで抑える回路設計により、接続形態を問わず高品質なサウンドを提供します。

ヒートシンクをイメージしたプロダクトデザインは、アルミ製ボディを通じた優れた放熱性を備え、音質への影響を抑制。MagSafe対応の専用マグネットベースが付属し、スマートフォンとの組み合わせで優れた携行性を実現しています。

UAC1.0/2.0対応で家庭用ゲーム機への接続も想定されており、高解像度サウンドをゲームプレイにも活用できます。

AK4493S搭載DAC選びのポイント

AK4493S搭載製品を選ぶ際に押さえておきたいポイントを解説します。

用途に合わせた選択

  • デスクトップリスニング向け: 据え置き型のDAC/アンプは電源供給が安定し、より高い出力と音質性能を発揮します。FIIO K7やSMSL D400EXなどが該当します。
  • ポータブル用途: スマートフォンやタブレットと接続して外出先で使うならAstell&Kern AK HC4やONIX Alpha XI1などのコンパクトモデルが最適です。
  • 多機能性重視: 複数の入力端子やBluetoothなど様々な接続方法に対応したモデルは、多様なオーディオ環境を構築したい方に向いています。

接続方法とインターフェース

  • USB接続: ほとんどの製品がUSB接続に対応しており、PCやスマートフォンと接続が可能です。XMOSチップの世代によって対応サンプリングレートやパフォーマンスが異なります。
  • 光デジタル/同軸デジタル: テレビやCDプレーヤーなどとの接続に便利です。
  • Bluetooth: ワイヤレス接続したい場合は、高音質コーデック(LDAC、aptX HD等)対応モデルを選びましょう。
  • バランス出力: 4.4mmや2.5mmのバランス出力を備えたモデルは、対応するヘッドホンやイヤホンとの組み合わせでより高い音質性能を発揮します。

音質特性

  • ニュートラル志向: 原音に忠実なフラットな音質特性を好む方には、SMSL D400EXやTOPPING E30II liteなどが向いています。
  • ウォーム志向: 温かみのある音色が好みなら、FiiOのK7やK9 AKMなどがおすすめです。
  • アナログライク: より自然でアナログに近い音質を求めるなら、iBasso Audio Nunchakuなどのチューブアンプタイプも検討する価値があります。

予算別おすすめモデル

  • エントリークラス(1万円台前半): EarFun UA100、S.M.S.L SU-1など
  • ミドルクラス(2〜3万円台): FIIO K7、ONIX Alpha XI1、Astell&Kern AK HC4など
  • ハイエンドクラス(5万円以上): FIIO K9 AKM、SMSL D400EX、SMSL D400ESなど

DAC活用のためのオーディオ環境整備

AK4493S搭載DACの性能を最大限に引き出すためのポイントをご紹介します。

最適なヘッドホン/イヤホンの選択

DACの性能を十分に活かすには、相応の解像度を持つヘッドホンやイヤホンとのマッチングが重要です。DACの出力インピーダンスとヘッドホンのインピーダンスの相性も考慮しましょう。一般的に:

  • 高インピーダンス(300Ω以上)のヘッドホン: 据え置き型の高出力DACとの組み合わせが最適
  • 中〜低インピーダンス(16〜150Ω): ポータブルDACでも十分に駆動可能

音源の選択

DACの性能を引き出すには、高品質な音源を使用することが重要です。

  • ハイレゾ音源: FLAC、WAV、DSDなどの非圧縮または可逆圧縮のフォーマット
  • ストリーミングサービス: Tidal HiFi(MQA対応)、Amazon Music HD、Apple Music(ロスレス)など
  • MQA対応: MQA対応DACとMQA音源の組み合わせで、マスタークオリティの再生が可能

接続ケーブルの重要性

DACとの接続に使用するケーブルも音質に影響します。

  • USB接続: 遮蔽性の高い専用のオーディオグレードUSBケーブルを使用すると、ノイズを低減できる場合があります
  • アナログ出力: バランス接続に対応している場合は、バランスケーブルの使用でより高いS/N比と分離度を得られます
  • 光デジタル/同軸デジタル: 高品質なデジタルケーブルを使用することで、信号伝送の安定性が向上します

まとめ:AK4493Sが切り開く高音質オーディオの世界

旭化成の最新DACチップ「AK4493S」は、超低消費電力と超低歪みを両立した革新的なチップとして、様々なオーディオ機器に採用されています。ナチュラルで有機的な音色表現と高い解像度を兼ね備え、デジタルオーディオの新たな可能性を切り開いています。

ご紹介した製品の中から、あなたの用途や予算、好みの音質に合わせた一台を見つけて、新たな音楽体験を楽しんでみてはいかがでしょうか。高品質なDACとの出会いは、あなたの音楽ライフを一変させる可能性を秘めています。

適切な製品選びと周辺環境の整備によって、AK4493Sの持つポテンシャルを最大限に引き出し、より豊かなオーディオ体験を実現しましょう。

関連記事の一覧