スマートフォンやPCからより高音質な音楽を楽しみたいと考えているなら、高音質コーデック「LDAC」対応のDAC(デジタル・アナログ・コンバーター)が解決策となるでしょう。本記事では、ワイヤレスでもハイレゾ相当の音質を実現する最新LDAC対応DACを詳しく解説します。DACチップの性能から接続性まで、選ぶ際に重要なポイントを網羅的に紹介していきます。
目次
- LDACとは?音質への革新的アプローチ
- LDAC対応DACを選ぶ際のチェックポイント
- DACチップの性能が音質を決定する
- その他のチェックポイント
- おすすめLDAC対応DAC 8選
- 1. FiiO BTR15 – ES9219MQデュアル構成の小型ハイパフォーマンスDAC
- 2. Topping DX3 Pro+ – ES9038Q2M搭載の多機能デスクトップDAC
- 3. Khadas Tea – ES9281AC Pro搭載の革新的MagSafe対応DAC
- 4. FiiO BTR17 – ES9069QデュアルとTHX AAAアンプの最強コンビネーション
- 5. 1Mii DS200Pro – ES9018K2M搭載のコストパフォーマンス型DAC
- 6. S.M.S.L DL200 – ES9039Q2M搭載の次世代フラッグシップDAC
- 7. Sabaj A20d – AK4499EX搭載の究極のハイエンドDAC
- 8. Audirect Beam3PLUS – VGP2022受賞の携帯性に優れたDAC
- DACチップメーカー別の音質傾向
- ESS Technology(Sabre DAC)
- 旭化成(AKM / Velvet Sound)
- Cirrus Logic
- Qualcomm
- LDACの真価を引き出す設定とコツ
- Android端末でのLDAC設定方法
- 高音質ストリーミングサービスの活用
- 接続安定性を高めるコツ
- LDAC技術の進化と将来性
- まとめ:LDAC対応DACがもたらす新たな音楽体験
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LDACとは?音質への革新的アプローチ
LDAC(エルダック)はソニーが開発した高音質Bluetoothオーディオコーデックです。通常のBluetoothの約3倍(最大990kbps)のデータ転送速度を実現し、CDに匹敵する高品質な音楽データをワイヤレスで伝送できます。一般的なSBCコーデック(328kbps前後)と比較すると、より細かな音の粒立ちや空間表現が可能となり、従来のBluetoothでは失われていた音楽の繊細なニュアンスまで再現できます。
LDAC対応機器の大きな利点は、Android 8.0以降の標準機能として採用されていること。多くのAndroidスマートフォン所有者は、適切なLDAC対応DACを用意するだけで、すぐにこの高音質体験にアクセスできるのです。
LDAC対応DACを選ぶ際のチェックポイント
DACチップの性能が音質を決定する
DACの心臓部とも言えるDACチップは、音質に直結する重要な要素です。現在のハイエンドDACでは主に以下のチップメーカーの製品が採用されています:
- ESS Technology(ESS): Sabre DACとして知られる高性能チップ。ES9038、ES9218などの型番があり、高いS/N比と低歪率が特徴
- 旭化成エレクトロニクス(AKM): AK4493、AK4377などの型番があり、自然で温かみのある音質が特徴的なVelvet Sound技術
- Cirrus Logic: 低消費電力と高音質のバランスに優れたチップ
- Qualcomm: aptXシリーズで知られるQualcommも高性能DACチップを提供
その他のチェックポイント
- 対応コーデック: LDAC以外にaptX HD、aptX LL、AACなど複数のコーデックに対応しているほうが汎用性が高い
- 入出力端子: 使用環境に合わせたUSB、光デジタル、同軸、アナログ入力などの接続オプション
- バランス出力: 4.4mmや2.5mmのバランス端子があれば、より高音質な再生が可能
- バッテリー駆動時間: ポータブルタイプの場合、実用的な駆動時間の確保
- Bluetoothバージョン: Bluetooth 5.0以上であれば安定した接続が期待できる
おすすめLDAC対応DAC 8選
様々な予算とユースケースに合わせた、高音質LDAC対応DACを厳選して紹介します。各製品のDACチップ性能にも着目して解説していきます。
1. FiiO BTR15 – ES9219MQデュアル構成の小型ハイパフォーマンスDAC
FiiO BTR15は、ESS Technology製の高性能DACチップ「ES9219MQ」を左右独立で2基搭載した完全バランス構成のポータブルBluetoothアンプです。
DACチップ詳細:
ES9219MQはESS Technologyの統合型DACチップで、低ノイズ・低歪みと高出力を両立。デュアル構成による完全バランス設計により、チャンネルセパレーションが向上し、より広がりのある音場を再現します。
主な特徴:
- 統合型DACチップのDAC部とヘッドホンアンプ部に独立電源供給
- XMOS「XU316」コントローラー搭載でPCM384kHz/32bit、DSD256再生対応
- 4.4mmバランス出力で最大340mW(先代モデル比約40%向上)
- Qualcomm「QCC5125」Bluetooth IC搭載
- グローバル・パラメトリックイコライザー機能
こんな人におすすめ:
高音質志向のイヤホンやヘッドホンを所有しており、外出先でも妥協のない音質を楽しみたい方に最適。特に、バランス接続可能なイヤホン・ヘッドホンとの相性が抜群です。
2. Topping DX3 Pro+ – ES9038Q2M搭載の多機能デスクトップDAC
Topping DX3 Pro+は、据え置き型の多機能DACアンプで、高性能なESS SabreチップとNFCA回路設計による優れた音質特性が特徴です。
DACチップ詳細:
ES9038Q2Mは、ESS Technologyのミドルレンジ向けSabre DACチップで、ハイエンドモデル譲りの技術を採用。DNR 120dB、THD+N -110dBの特性を持ち、デジタル領域でのジッター除去技術によりクリアな音質を実現します。
主な特徴:
- 綿密な回路設計でTHD+N 0.00015%の超低歪みを実現
- QCC5125 Bluetoothチップ搭載でLDAC/AAC/SBC/APTX/APTX LL/APTX HD対応
- 超低ノイズ・低歪みのNFCA回路採用
- XMOS「XU208」採用でPCM32bit/768kHzとDSD512対応
- 4つの出力モード(ヘッドホン、ヘッドホン+ライン、DAC、プリアンプ)
こんな人におすすめ:
自宅でのリスニング環境を充実させたいオーディオ愛好家に最適。スピーカーとヘッドホンの両方を活用したい方や、将来的にオーディオシステムを拡張する予定がある方にも適しています。
3. Khadas Tea – ES9281AC Pro搭載の革新的MagSafe対応DAC
超薄型設計とMagSafe対応が特徴的なKhadas Teaは、iPhoneユーザーも使いやすいポータブルDACです。
DACチップ詳細:
ESS ES9281AC Proは、モバイル向けに最適化されたDACチップで、低消費電力ながら高いダイナミックレンジを実現。MQA再生にも対応し、ストリーミングサービスの高音質コンテンツも美しく再生できます。
主な特徴:
- 厚さ7.95mm以下の超薄型アルミニウムボディ
- MagSafe対応でスマートフォンに磁気アタッチ可能
- Bluetooth 5.0対応でLDACおよびaptX HDコーデック対応
- 1160mAHバッテリーで8時間以上の連続再生
- USB-C to Lightningアダプタ付属でiPhone対応
こんな人におすすめ:
iPhoneユーザーや、スマートフォンと一体化した運用を望む方に最適。デザイン性の高さからファッションやライフスタイルにもこだわる方にもおすすめです。
4. FiiO BTR17 – ES9069QデュアルとTHX AAAアンプの最強コンビネーション
FiiO BTR17は、最新のワイヤレス技術と高品位なアナログ回路を組み合わせたハイエンドポータブルDACです。
DACチップ詳細:
ES9069QはESS最新世代のDACチップで、HyperStreamテクノロジーの採用により、DNR 130dB、THD+N -120dBという優れた特性を実現。デュアル構成により、チャンネル間のクロストークを最小限に抑え、左右の分離感が向上しています。
主な特徴:
- Qualcomm「QCC5181」搭載でaptX Losslessコーデック対応(CD級ロスレス音質)
- Bluetooth 5.4対応で安定性向上
- THX AAA 788+アンプ回路搭載(左右独立4基、計8チャンネル)
- D.モード時には最大650mWの高出力を実現
- 10バンド高精細ロスレスPEQ搭載
こんな人におすすめ:
最新の技術と最高級の音質を求める熱心なオーディオファイルに最適。特にaptX Lossless対応機器も所有している方は、LDACとaptXの両方の利点を活かせます。
5. 1Mii DS200Pro – ES9018K2M搭載のコストパフォーマンス型DAC
既存のオーディオシステムにBluetooth機能を追加したい方に最適な1Mii DS200Proは、幅広い接続性と高音質を両立しています。
DACチップ詳細:
ES9018K2Mは、ESS TechnologyのSABRE32 Reference DACシリーズの一つで、リファレンスクラスの性能を提供。DNR 127dB、THD+N -120dBの特性を持ち、ハイレゾ音源の繊細なディテールを忠実に再現します。
主な特徴:
- PCM 384kHz/32bit対応の高性能DAC
- Class1 Bluetooth技術による最大30mの伝送距離
- RCA/3.5mm AUX/光デジタル出力対応
- アルミニウム製ボディによる電磁シールド
- CSR Bluetoothチップ搭載でLDAC、aptX HD、aptX LL対応
こんな人におすすめ:
既存のオーディオシステムやアンプを持っており、それらにワイヤレス機能を追加したい方に最適。特に長距離伝送が必要な広い部屋での使用に適しています。
6. S.M.S.L DL200 – ES9039Q2M搭載の次世代フラッグシップDAC
S.M.S.L DL200は、最新のES9039Q2M DACチップを搭載した高性能デスクトップDACで、驚異的な低歪み性能が特徴です。
DACチップ詳細:
ES9039Q2MはESS Technologyの最新世代のDACチップで、前世代のES9038Q2Mをさらに進化させた製品。0.00006%(-123dB)という驚異的な低歪み性能を実現し、音楽の細部表現力が大幅に向上しています。
主な特徴:
- XMOS「XU316」搭載でPCM 768kHz/32bit、DSD512、MQAフルデコード対応
- MQA-CD対応の光入力と同軸入力
- PLFCヘッドホンアンプ回路搭載で16Ωで最大3Wの高出力
- Bluetooth 5.1対応でLDAC、aptX Adaptive、aptX HD対応
- 高/低出力ゲイン調整可能(+11dB/0dB)
こんな人におすすめ:
最高レベルの音質と多機能性を求めるオーディオ愛好家に最適。特に高インピーダンスヘッドホンを使用する方や、様々な入力ソースを活用したい方におすすめです。
7. Sabaj A20d – AK4499EX搭載の究極のハイエンドDAC
Sabaj A20dは、旭化成の最高峰DACチップを搭載した、妥協のないハイエンドモデルです。
DACチップ詳細:
AK4499EXは旭化成の最新フラッグシップDACチップで、AK4191との組み合わせにより最高レベルの性能を発揮。0.00006%(-123dB)の超低歪みを実現し、最も繊細な音楽信号までクリアに再現します。Velvet Sound技術が生み出す豊かな音楽表現が特徴です。
主な特徴:
- XMOS「XU316」採用でPCM 768kHz/32bit、DSD512、MQAフルデコード対応
- MQA-CD対応の光入力と同軸入力
- PLFCヘッドホンアンプ回路搭載で超低歪み(0.0001%/-120dB)
- 4.4mmバランス、6.35mmシングルエンド出力端子搭載
- Bluetooth 5.0対応でLDAC、aptX HD、aptX、AAC、SBC対応
こんな人におすすめ:
最高峰のDACチップの性能を体験したいオーディオマニアに最適。特に旭化成のVelvet Soundの特徴である自然で豊かな音質を求める方におすすめです。
8. Audirect Beam3PLUS – VGP2022受賞の携帯性に優れたDAC
VGP2022SUMMER受賞のAudirect Beam3PLUSは、携帯性と高性能を両立したポータブルDACです。
DACチップ詳細:
具体的なチップ名は公表されていませんが、PCM 32bit/768kHz、DSD512に対応する高性能DACチップを搭載。オーディオ愛好家の厳しい目にも耐える音質性能を備えています。
主な特徴:
- Bluetooth 5.0対応でLDAC、aptX HD、aptX、AAC、SBC対応
- PCMは最大32bit/768kHz、DSD512までの高解像度再生に対応
- スマートフォン、PC、ゲーム機など様々なデバイスと接続可能
- 3段階のゲイン調整機能(高・中・低)
- コンパクトなサイズ(78mm×38mm×12mm)
こんな人におすすめ:
様々なデバイスと組み合わせて使いたい方や、携帯性と高音質のバランスを求める方に最適。特にゲーム機なども含めた複数のデバイスで活用したい方におすすめです。
DACチップメーカー別の音質傾向
各メーカーのDACチップには、それぞれ特徴的な音質傾向があります。もちろん、最終的な音質はDACチップだけでなく回路設計や電源部の品質にも大きく依存しますが、一般的に以下のような傾向があると言われています:
ESS Technology(Sabre DAC)
- 特徴: 高い解像度、広い音場、明確な定位
- 音質傾向: 解析的で精密な音質、高域の伸びが良い
- 向いている音楽: クラシック、ジャズ、繊細な楽器演奏が中心の曲
旭化成(AKM / Velvet Sound)
- 特徴: 自然で滑らかな音質、豊かな中域表現
- 音質傾向: 温かみのある音色、聴き疲れしにくい
- 向いている音楽: ボーカル曲、アコースティック、長時間聴くプレイリスト
Cirrus Logic
- 特徴: バランスの取れた音質、低域の量感
- 音質傾向: ニュートラルでフラットな特性
- 向いている音楽: 幅広いジャンルに対応、特にロックやポップスに適合
Qualcomm
- 特徴: 低消費電力と高音質のバランス
- 音質傾向: クリアでダイレクトな音質
- 向いている音楽: EDM、ロック、パワフルな表現が求められる楽曲
LDACの真価を引き出す設定とコツ
せっかくの高性能DACも、適切な設定がなければ本来の性能を発揮できません。以下は、LDAC対応DACの性能を最大限に引き出すためのヒントです。
Android端末でのLDAC設定方法
- 開発者向けオプションを有効化:
- 「設定」→「端末情報」→「ビルド番号」を7回タップ
- LDACコーデックの選択:
- 「設定」→「開発者向けオプション」→「Bluetoothオーディオコーデック」→「LDAC」を選択
- LDAC再生品質の設定:
- 「設定」→「開発者向けオプション」→「LDAC再生品質」
- 「音質優先」(990kbps/909kbps)を選択すると最高音質で再生
高音質ストリーミングサービスの活用
LDACの高音質を活かすには、高品質な音源が必要です。以下のストリーミングサービスの設定を最高品質にしましょう:
- Amazon Music HD: 設定からHD/Ultra HDを有効化
- Apple Music: 設定から「ロスレスオーディオ」を有効化
- Spotify Premium: 設定から「音質」→「非常に高い」を選択
- Tidal HiFi: MQA対応DACなら「マスター」品質で再生可能
接続安定性を高めるコツ
- 適切な距離を保つ: 送信機と受信機は5m以内に配置するのが理想的
- 電波干渉を避ける: Wi-Fiルーターなど2.4GHz帯の機器から離す
- 障害物を減らす: 送信機と受信機の間の障害物は少なくする
- バッテリー残量を確認: 送信・受信両デバイスのバッテリー残量が少ないと接続が不安定になる場合も
LDAC技術の進化と将来性
LDAC技術は今後も発展が期待されています。特に以下の方向性での進化が予想されます:
- 低消費電力化: バッテリー駆動時間の延長
- 接続安定性の向上: より遠距離での安定した接続
- 他のコーデックとの融合: aptX Losslessなど他の高音質コーデックとの互換性
- より幅広いデバイスでの対応: 現在主にAndroid端末で利用可能ですが、将来的には他のエコシステムでの採用も
高音質コーデックへの投資は、将来的な互換性という観点からも価値があるでしょう。特にLDACはソニーの技術でありながらAndroidの標準機能として広く採用されているため、長期的なサポートが期待できます。
まとめ:LDAC対応DACがもたらす新たな音楽体験
LDAC対応DACへの投資は、日常の音楽体験を劇的に向上させる可能性を秘めています。高性能なDACチップと最新のBluetooth技術の組み合わせにより、ワイヤレスでありながらほぼ有線に匹敵する音質を実現できるようになりました。
本記事で紹介した製品は、それぞれ異なる価格帯や用途に最適化されています。自分の使用環境や予算に合った製品を選ぶことで、より満足度の高い音楽体験が得られるでしょう。
高音質への投資は、単なるスペックアップではなく、音楽との新たな出会いをもたらします。これまで気づかなかった楽器の音色や、アーティストの息遣いまで聴こえるようになれば、お気に入りの曲を「初めて聴くような感覚」で再発見できるはずです。
最後に、技術は日々進化していますが、最終的に重要なのは「あなたにとっての聴き心地」です。可能であれば実際に試聴して、自分の耳で確かめることをおすすめします。